本記事は2023年1月5日の「人民新聞」に掲載されたものですが、許可を得て、転載しています。
また1年が過ぎ新しい年が明けた。明るい話で始まりたいが、そうできない状況が悲しい。この12年間は私たちにとって、非日常的な日々であり、それが身体に檻のように淀み続ける。いつになったら気持ちいい年が迎えられるのだろうかと思う。
東京電力福島原発事故を受けて、ドイツや北欧では市民の力で原発をなくそうという動きが出た。実際にドイツは脱原発を宣言した。だが日本は事故に学ばず、「原子力政策の方向性と実現にむけた行動指針」という、信じられないとりまとめ案を出した。
「再稼働への総力結集」「既設炉の最大限活用」「次世代革新炉の開発建設」を盛り込んだのだ。 悲惨な事故を体験した私たちは、全てをウソの言葉で操作する国の思うままにはならない。
そして、福島県民も学ばなかった。10月30日の福島県知事選では、県民を苦しめていた内堀現事の追い出しを願った。だが現知事が再選され、汚染水海洋放出反対を前面に出し戦った新人が敗れた。汚染水海洋放出に県民の7割、漁民の大半が反対していたのに、どうしてこんな結果になるのか。
安倍元首相が13年に「原発事故はアンダーコントロール」と言って、オリンピックを強行したころから、ふくしまの食べ物は安全だとアピールし続けた。「20ミリシーベルトは超えませんから」と帰還困難地区住民に帰還を迫る動きが加速した。さらに国は、今や「除染をしない高線量の土地ですが、どうぞ使ってください」言っている。住民のいない町に立派な箱物を作り、マスコミは「復興が進んでいる」と報道する。汚染水海洋放出の準備も着実に進んでいる。一方で原発の廃炉は全く進まない。この間、福島第一原発のペデスタル基礎(原子炉圧力容器を設置する鉄筋コンクリート製の土台)が崩壊危機にあり、ふたたびだいじこになりかねないことがわかった。こうした「目に見える問題」は無視され「安全」「大丈夫」などと、平然と、公然と嘘をつき続ける。
また内部被ばくの長期化で、小児甲状腺がんや全世代の突然死やガン患者が明白に増加している。だがこうした「目に見えない問題」にたいしては知らんぷりだ。必死に生きようとしている住民に、あの手この手で声を上げることを諦めさせ黙らせる。そして行政は避難者を追い詰める。
国連人権特別報告 せいふを批判 バラバラにされた声を一つに
それでも、希望はある。昨年、国連人権特別報告者セシリア.ヒメネス=ダマリーさんの訪日がようやくかなった。セシリアさんは各地の避難者や福島現地の人と会い「国レベルでの被災者の保護と支援は十分でない」と批判した。そして「自分たちが意見を述べる権利が保障されなければならない」と私たちが望んできた人権を守るべきことを提言した。私たちに一筋の光のように私たちに届いた。
事故の被災者が国による理不尽な扱いをなんとか打ち崩すには、この12年でバラバラにされた声を一つにすることだと思う。手探りで小さな声をかき集め大きな声にし、一筋の光から光の束になるまで声を上げ続ける。
原発事故と被害は予測しきれないことが多い。そのため私たちは「チェルノブイリ法日本版」の条例作りを進めている。被災の位置づけと被災者の権利を明確にする。自分たちのことは自分たちで守ろうと「被災者の権利保障」を貫いた、私たちの一つの声なのである。
ふくしまの地から、脱原発、脱被ばくのために今年も頑張ります。応援をよろしくお願いします。
市民立法「チェルノブイリ法日本版」をつくる郡山の会
郷田みほ
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