市民が育てるチェルノブイリ法日本版の会では、全国各地の会員の日々の取り組み、活動を随時、ニュースレターにして発行、賛助会員その他支援者の皆さんに配布しています。
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チェルノブイリ事故から40年、福島原発事故から15年を迎えた今年(2026年)、日本と世界の社会はどこに向かおうとしているのか、今、何が問われているのか。それについて考える以下の講演とパネルディスカッションを5月23日、港区の明治学院大学白金校舎で行います(>以下のチラシのPDF なお、学生は無料)。
この点、私(柳原)は魯迅の次の言葉が胸に刺さっている。
「希望とは、もともとあるものだとも言えぬし、ないものだともいえない。それは地上の道のようなものである。
もともと地上には、道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」〔「故郷」(竹内好訳・ちくま文庫「魯迅文集1」)〕
その希望について、私は、311後の翌年、311後から1年間を振り返って書き留めた次の備忘録と1年前、日本社会のこれから百年間の悲劇が311から始まったことを書き留めた次の備忘録が、今の私の希望につながっている。この道が出来るのか、荒地のままにするのか、それを決めるのは私たち市民の手にかかっている。
◎「6.24」提訴から一周年の思い――なぜ、ふくしまで集団疎開が実現しないのか。疎開裁判から市民立法へ(2012.7.19一部追加)
目 次
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映画「ニューシネマパラダイス」 |
2月23日にさいたま市でやったチェルノブイリ法日本版の学習会、そこで話したいと思いながら、準備不足と当日の時間不足で話せなかったことがあります。
それは「311後のあべこべの時代を正す、その原動力はどこに見出せるか」についてです。
以下、まだ草稿段階のメモですが、これについて話したいと思ったことを記します。
2つあって、
1つは、「シンドラのリスト」の主人公オスカー・シンドラーのような原動力
もう1つは友情という原動力
1、オスカー・シンドラーのような原動力
(前置き)
昔、スピルバーグがアウシェビッツの生存者たちから、ホロコーストの悲劇を、生存者が生きているうちに映画にして欲しいと懇請されながらずっとそれを果たさず、いわば逃げ回っていた。とうとう痺れを切らした生存者たちが「生存者たちが死んでしまうぞ!」とねじ込んだ末に、出来上がった映画が「シンドラーのリスト」だった。そのことを知ったとき、だったら、なんであんなごろつきみたいな奴を主人公にしたんだろうかと不思議でたまりませんでした。その訳は主人公シンドラーはスピルバーグ自身だったからなんだとあとになって合点しました。スピルバーグは高貴な英雄を主役にする映画は作りたくなかった、自分自身みたいに、楽しいことに夢中になるごく普通の市民を主役にした映画を作りたかった。けれど、そんな映画をどうやって作っていいか分からなかった。それで、ずっと悶々として製作に着手できなかった。しかし、或る時、自分のようなチャランポランな普通の市民でも主人公になれる映画があることに気がついた。それが超チャランポランなシンドラーを主役にした映画だった。
私もまた、市民立法日本版を、高貴な英雄が主役になる市民運動にはしたくなかった、自分自身みたいに、楽しいことに夢中になるごく普通の市民が市民立法の主役になる市民運動にしたかった。けれど、そんな市民運動をどうやって作っていいか私も分からなかった。しかし、或る時、チャランポランな普通の市民でも主役になれる市民立法があるのではないかということに気がついた。それがシンドラーのようなチャランポランな普通の市民を主役にした市民運動だった。そしたら、これが311後のあべこべの時代を正す原動力のひとつになれるのではないかと思うになった。
ただし、今回、私が惹きつけられた直接のきっかけは、シンドラーではなくて、ジョー・オダネルという元米従軍カメラマンでした。
というのは、彼のことを書いた「神様のファインダー」を読み、20代で広島・長崎の被爆地を撮影した頃の彼の雰囲気から、彼がよきにつけあしきにつけ、典型的なヤンキーの若者にしか思えなかったからです。そうしたアッケラカンとして能天気風だった彼が、その後、晩年に至り、原爆の犯罪を正面から訴える求道者に変貌したことに、いったい、彼はどこで、どう変貌したのか、それにとても関心が沸きました。
その謎について、彼自身が本の58頁以下に正直に書いていましたーーそれは、何か高い道徳的な感情に導かれてとかいう高貴な出来事なのではなくて、むしろそれとは正反対の、原爆の犯罪という悲惨な現実からずっと目を背けてきた自分が、このままではやっていけないと悪夢にうなされる苦痛の末に、この苦しみは原爆と向かい合う中でしか克服できないと悟り、そこで、原爆の犯罪を正面から訴える生き方を選択する。それを読み、何というリアルな出来事なのだろう、これは「シンドラーのリスト」の主人公のようだと思いました。そして、これがむしろ普通の市民が辿ることができる、リアルな変貌の姿ではないかと思うようになりました。
つまり、311後のゴミ屋敷の日本社会を再建する取組みは、普通の市民にとって、何か高い道徳的な感情に導かれて行なうものではなくて、むしろそれとは正反対の、原発事故の犯罪という悲惨な現実からずっと目を背けてきた自分が、このままではやっていけないと悪夢にうなされる苦痛の末に、この苦しみは原発事故と向かい合う中でしか克服できないと悟り、そこで、原発事故の犯罪を正面から訴え、その救済を正面から取り組む生き方を選択することなのではないかと(未完)。
2、友情という原動力
それは、映画「ニューシネマパラダイス」で描かれた友情のことです。は、この映画の中で、主人公の貧しいトトが失恋し失意の底にある時、親父代わりの映画技師アルフレッドからこう言われて、それで背中を押され、トトは自分の進むべき道を悟る、そして、それを一途に貫く。
最近、久々にこの映画を観たとき、この二人の友情は何と貴いものだろうか、本当に人生の最高の宝もの、糧だと思い、同様に、このような友情こそが日本版の原動力なんだと実感しました。
「日本版のために自分のすることを愛せ
子どもの時、映写室を愛したように」
アルフレッド「人生はお前が見た映画とはちがう。
人生はもっと困難なものだ。
行け
ローマに戻れ
お前は若い
前途洋々だ 」
トトがローマに旅発つ日、駅で
アルフレッド「帰ってくるな
私たちを忘れろ
ノスタルジアに惑わされるな
すべてを忘れろ
‥‥‥‥‥‥
自分のすることを愛せ
子どもの時、映写室を愛したように」
2月23日、さいたま市で、チェルノブイリ法日本版の学習会をやりました。
What time is it ?――311後のゴミ屋敷を人権屋敷に再建する時代――
1、この質問はチャップリンの映画「独裁者」の冒頭に出てくるセリフです。戦場で、兵士チャップリンが上官と雲の中を飛行中、知らない間に飛行機がさかさに飛び、表題の質問に彼が懐から懐中時計を取り出すと時計の鎖がとび上がってビックリするシーンです。そのシーンが示すように、答えはあべこべの時代です。
このあべこべが現代でも続いている。しかも現代はそのあべこべが前例のないくらい極端なまでに進んだ時代です。なぜなら、現代は311後=原発事故後の社会だからです。原発事故とは何か。それは人類が推し進めてきた科学技術の最先端で登場した、最先端の科学技術がもたらした最先端のカタストロフィー(大惨事)だった。つまり、原発事故は私たちの科学技術の栄華の成れの果ての姿です。その結果、311後の日本社会は原発事故の救済を全面的にネグレクト(放置)する人権侵害のゴミ屋敷となった(日本政府がやったことは次の3つだけだった。①情報を隠す②事故を小さく見せる③基準値の引上げ)。そこでは、原発事故を起こした加害者たちは救済者のつらをして、命の「復興」は言わず、「経済復興」と叫んで堂々と開き直り、命に危険にさらされた被害者は「助けて」という声すら上げられず、上げようものなら経済「復興」の妨害者として迫害される、あたかも密猟者が狩場の番人を、盗人が警察官を演じている。安全を振りまくニセ科学が科学とされ、危険を警鐘する科学がニセ科学扱いされる、狂気が正気とされ、正気が狂気扱いされるというあべこべが出現したからです。なぜ、311後の日本社会はこのようなあべこべの、そして人権侵害のゴミ屋敷社会になってしまったのか。
2、注意深く観察すると科学技術によって引き起こされた事故はいつも2つの顔を持っています。1つは「自然対人間」の関係で見せる顔。もう1つは「人間対人間」の関係で見せる顔。「自然対人間」の関係で原発事故が示す本質は空間的にも時間的にも前例のない「惨劇」です。40秒足らずの実験の暴走で欧州全土が人の住めなくなる寸前までいったチェルノブイリ事故。2号機に水が入らず、東日本全滅を覚悟した福島原発事故。時間的には「これから100年放射能と付き合うために」(菅谷昭前松本市長)という覚悟が問われる。さらに原発事故はそれだけでは済まない。もう1つの顔が存在する。それが原発事故が「人間対人間」の関係で示す顔、その本質は「犯罪」です。チェルノブイリ事故で欧州全土を救った物理学者のワシリー・ネステレンコ、その彼に与えられた恩賞は所長の地位解任とKGB(ソ連の諜報機関)による二度の暗殺計画でした。理由は、国から「パニックを煽るろくでなし」と警告されたにもかかわらず、放射能を感知する器官を持たない汚染地の住民たちが無防備なまま取り残されているのに対し彼らの保護を訴え続けたからです。
福島原発事故も、いくら健康被害が発生しても国は「私たちは何も知らない、語れない」。チェルノブイリですら認定された原発事故と小児甲状腺がんとの因果関係も今なお頑なに認めようとしない。にもかかわらず、敢えて健康被害を語ると、漫画「美味しんぼ」のように、「パニックを煽るろくでなし」(今日ではより洗練された言葉で「風評被害」)と罵られる。それは国の確固たる信念と世論操作に基づいたもので、もはや単なる事故ではなく、226事件、サリン事件のように事件・犯罪と呼ぶのがふさわしい。それが311事件です。その結果、出現したのが最先端の科学技術がもたらした最先端の大惨事である原発事故を前にして、その救済を全面的にネグレクト(放置)し、至る所が人権侵害のゴミ屋敷と化した日本社会。
3、ゴミ屋敷についてもまた、科学技術によって引き起こされた事故が持つ2つの顔が厄介さを倍加する。1つ目の顔が「自然対人間」の関係での厄介。それが「見えない、臭わない、味もしない、理想的な毒」である放射能の特質がフルに反映した、見えない、臭わないゴミ屋敷。それは私たちの五感の通用しない「日常生活」と分断された被ばくがもたらす放射能汚染と健康被害の壮大なゴミ屋敷。もう1つの顔が「人間対人間」の関係での厄介。それが私たち市民が、単に今日の国や科学者の政策に翻弄されているばかりではなく、明治維新以来ずっと市民を支配してきた国や科学者の政策に今なお翻弄され続けているという事実。とりわけそれは、小児甲状腺がんだけでも明らかですが、放射能による健康影響に声をあげない医療関係者たちの中に顕著に現れている。それは七三一部隊の伝統が水面下で悪夢のように今も医療関係者たちをがんじがらめに押さえつけているからです。そこで日常的に行なわれた人体実験は重大な犯罪だった。しかし、この犯罪は戦後、裁かれなかった。米国と、人体実験のデータの提供を引換に戦争犯罪の免責という取引(密約)が成立したからです。その結果、免罪された七三一部隊はトップから総勢1万以上の隊員は、ひとにぎりの例外を除いて、戦後日本の医療・医学界・製薬業界に復権し、人体実験で得た研究データを活用して要職につき大きな力を持った。同時にそれは戦後日本の医療・医学界・製薬業界の水面下で、七三一部隊の思想・哲学・方法が伝統として生き延びることでした。お国のためなら「人体実験」に手を染めた思想が水脈のように受け継がれ、311の核戦争(福島原発事故)の発生で、再び戦争と「医の倫理」が衝突したとき、脈々と受け継がれてきた七三一部隊の思想・哲学・方法が原発事故の正しい救済をかつてないほど大きく歪曲していった。それが311後の日本社会を壮大なゴミ屋敷にしている歴史的、根本的な原因の1つなのです。
4、これらの異常事態を前にして、そこにネグレクト(放置)された真の被害者は、百年続く福島原発事故の健康被害で苦しむ人たち、今後の原発事故発生によって、福島原発事故と同じ苦しみを味わうことになる(未来しかない)子どもたちです。その人たちは「人間として扱われる」必要があります。そのためには、311事件でゴミ屋敷と化した日本社会を人権屋敷に再建する必要があります。
その最初の一歩が、原発事故の国家責任を正面から承認し、国家の義務として、原発を通常に運転する時における放射線防護の世界標準(年1mSv)を原発事故の時にも適用して年1mSv以上の汚染地域に住む住民に「避難の権利」を保障したチェルノブイリ法、それを市民主導の「市民立法」の方法で、日本で実現しようという市民運動「市民が育てるチェルノブイリ法日本版」です。いま、日本を戦争の国にさせないために最も貢献している法律は1999年に成立した情報公開法です。当時、この法律には与野党も大手労組も全て関心を示さなかったため、市民が主導して日本各地の自治体で情報公開条例を積み重ねた末に制定されました。その市民主導の成功体験をモデルにして、ゴミ屋敷に化した日本社会を人権屋敷に再建しようというのが市民立法「日本版」です。
311後に生きる私たちにとって、未来しかない子どもたちにとって、この脱ゴミ屋敷への執念以外に、外に何が残されているだろうか。原発事故の犯罪という猛烈な執念に対抗する術として、市民の連合の力を実現することへの執念のほか、この世に何があるだろうか。これが市民立法「日本版」の執念です。 (2026.2.23)
◆プレゼン資料(>全文PDF)
(※)プロフィール
神奈川北央医療生協理事長、 さがみ生協眼科内科部長
甲状腺がん支援グループあじさいの会共同代表
一度目の登壇は、2018年3月の日本版の会結成の直前に、東京渋谷の光塾で「臨床医が語る、原発事故からの7年 ―子どもの甲状腺がんは?健康被害は?」というテーマで講演してもらいました(>そのときのお知らせと報告動画)。
以下、牛山さんの講演の動画と講演資料とチラシです。
◆動画
◆講演資料 PDFは>こちら
◆チラシ
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