以下は、10月26日の調布市で行った第2回目の学習会の報告の続きと、この学習会の主催団体「市民が育てるチェルノブイリ法日本版の会・調布」が発行している通信の1号と2号を紹介しました。
1、 学習会の報告(続き)
(1)、配布資料(レジメ)の冒頭「いかにして原発事故と向き合うか」について
「私たちは放射能を忘れたがっている、たとえ放射能災害の正しい事実を知ったからといっても。否、その時のほうがむしろ忘れたいと思う気持が一層強まる可能性がある。
それほど、放射能災害はこれまで人類が経験したことのない耐え難いほど過酷な現実を私たちに突きつけるものだから。」
この事態に対する次の問い、
「 私たちの、放射能を忘れたがる気持に打ち勝つことはもはや不可能だろうか。」
これは、言わずと知れた、311以来ずうっと、私たちに課せられた基本的な課題の1つです。
この課題について、今回の学習会の準備の中で、1つのヒントを授かりました。
それが、カントの言葉、
「倫理なき認識は盲目であり、認識なき倫理は空虚である。」
でした。
この言葉は次のように言い換えることができます。
「愛なき認識は盲目であり、認識なき愛は空虚である。」
または、
「実践なき認識は盲目であり、認識なき実践は空虚である。」
そこで今、この言葉を福島原発事故に当てはめれば、
「福島原発事故の救済は認識-倫理的(実践的)な取組みであり、一方だけでは盲目であり、空虚に陥る。」
人々が原発事故を忘れたいと考え、忘れたがってしまうのは、そのひとつの理由は、
実践(愛)なき認識は盲目であり、認識なき実践(愛)は空虚であるから、と。
だから、
知行合一(認識と行動を一致させる)は、単なる市民運動の標語にとどまるものではなくて、私たちの存在のあり方を根本から左右する真理なのだ、と。
だから、
「過酷な放射能災害の現実からつい逃げ、引きこもりに陥ってしまう」、これに打ち勝つためには知行合一を貫くしかないし、貫けばよい、それが市民立法「チェルノブイリ法日本版」のアクション。
つまり、
市民立法「チェルノブイリ法日本版」のアクションを続けることで、私たちは持続可能な元気を授かり、現実に立ち向かうことができる、と。
(2)、不正、不正義、不誠実といった悪と向き合うことの意味について
今回の学習会の準備の前に、子ども脱被ばく裁判で、10月23日〆切の鈴木眞一教授への質問項目(その報告は->こちら)の最後の詰めのところで、正直、あごがあがり、猛烈に不愉快で、もう勘弁してくれ、ここから逃げ出したい、この宿題を投げ出したいという強烈な要求に襲われました。
その理由は単純で、ウソとインチキで塗り固めた甲状腺検査の実態を、なめ回すように追跡していくことが、最後の詰めに至り、もうこんな反吐が出るような作業に、勘弁してくれ!という猛烈に不愉快な気分に襲われてしまったからです。
しかし、だからといって、ここで投げ出すわけにはいかない。
そう思ったとき、私の脳裏に浮かんだのは、チョムスキーが「チョムスキーとメディア」という映画のラストで、インディーズ・メディアのインタビューで、次の質問を受けた場面でした。
「何百回も講演をしてますね、東チモールの虐殺やパナマ侵攻や『死の部隊』、恐ろしい話ばかりだ。
原動力は何です?
嫌には なりませんか」(→そのシーン)
この質問に対し、しばらく思案した彼は、静かに、謎のような言葉を語ります。
「鏡に映る自分の姿を直視できるかの問題だね」
今回の学習会の準備の中で、チェルノブイリ法日本版を再定義した時、なぜチョムスキーのように、悪の正体を執拗に追及し、人々に語る必要があるのかが分かった気がしました。
それは、今回の学習会に参加した人たちもそうでしたが、多くの人々は今なお、福島県の甲状腺検査で現実に何が行われ、子どもたちの健康状態の真実が何であるか、闇に閉ざされたままであることを余り知らないし、さほど関心も示しません。
だから、誰かが福島県の甲状腺検査の正体を、不正、不正義、不誠実で満ち満ちている悪の実態を追及し、人々に知らせる必要がある。「福島の犯罪」という冷水をボーとしている人々の頭の上に正しく浴びせかける必要がある。
「君は福島の甲状腺検査に関心がないかもしれないが、福島の甲状腺検査は君に関心がある」ことを、これをあなたたち一人一人の命、運命が関わっている問題であることを、人々に思い知ってもらう必要がある。
むかし、数学基礎論の分野で、「いかなる体系もその体系の中では決定不可能な命題が存在する」(不完全性定理)ことを証明したゲーデルという若者がいて、彼は数学の中で最も否定的な定理(不可能であることを示す定理)を証明したと言われました。
しかし、この彼がなぜ、最も否定的な定理を証明することができかというと、彼の中に、ものごとを肯定的に受け止める姿勢がものすごく強烈にあったからだと言われています。
つまり、最も肯定的な姿勢を保持できる人だけが、最も否定的な定理の証明に立ち向かうことができる。
これと同じ意味で、悪の実態を誰よりも執拗に追及し、これを暴露してやまないチョムスキーがなぜここまで徹底して悪に立ち向かうことができたのか、それは彼が、悪と正反対の、善と愛と正義を誰よりも徹底して肯定しているからなんだと分かりました。
2、学習会の主催団体「市民が育てるチェルノブイリ法日本版の会・調布」が発行している通信
調布市の8月と10月の学習会の主催団体が発行している会の通信を紹介します。
第1号: その一部を末尾に紹介。全文->こちら
日本各地の自治体レベルで、子どもたちの甲状腺検査を実施することの意義について
第2号: 全文->こちら
①.11.9新宿デモに寄せられた広瀬隆さんのメッセージ
この狂気の国家を見ていると、まさしく日本は、明治時代から始まったアジア侵略の罪から現在までを懺悔しなければならない心境です。
チェルノブイリ法日本版(すなわち福島第一原発法)の制定を最後の砦として構築してゆきましょう。
②.10月1日にスタートした子ども脱被ばく裁判の証人尋問に際して、身体を張って真実に向き合おうとする裁判官こそ、チェルノブイリ法日本版の会の会員に相応しい、推薦したいと思ったこと。
通信1号(抜粋)
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