Q:避難の権利とは何ですか?
A:法律で定められた線量(年間1mSv)以上の汚染地域で放射線被曝を回避するために避難(被曝防止の直接的対応)の権利を社会が認めることです。国及び自治体が避難先の選定の補助を行い、避難の費用や生活維持を保障することです。
Q:何故権利が生じるのですか?
A:憲法でなんびとも健康で文化的な生活を営むことが保障されています。
第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
とりわけ原発事故は国及び原子力産業によって引き起こされるものであり、住民への迷惑行為の補償は国及び産業が全て負担すべきです。加えて、被曝限度が日本の法律(国の住民に対する約束事)で定められています(被曝限度は年間1mSv) ので、それ以上の汚染を住民に与えた場合は、国は避難の権利を保障しなければなりません。
Q:子どもの保護はどのようにして達成しますか?
A:年間1mSvを被曝限度量として避難の権利を認めることがまず大切です。国、自治体、学校と親が連携することが肝要です。学校単位での集団疎開などを具体化氏、子どもの被曝を軽減することが大切です。
Q:日本市民の被曝線量限度はどのように定められているのですか?
A:原子力基本法以下の法律に於いて、原子力関連事業はいくつかの放射能管理の条件を義務づけられています。区域区分の概要は次のようなものです。
(1)管理区域 管理区域は多大な被曝を与える恐れのある区域で業務上の関係者以外の一般の人が立ち入ることが禁止されています。①外部被曝の場合は「放射線管理区域」、②内部被曝の場合は「汚染管理区域」と呼ばれます。
(2)周辺監視区域 管理区域の周辺の事業所敷地内の区域で、年間1mSv以上の恐れのある区域です。
(3)周辺監視区域外 周辺監視区域外のいかなる地域も年間1mSvの線量限度を超えてはならないことが規定されています。
上記の様に周辺監視区域外での線量限度が定められています。従って避難の権利が生じるのは「線量限度以上の汚染がもたらされた」という条件であると考えられます。
Q:年間1mSvは外部被曝ですか?内部被曝ですか?それとも両方含むのですか?
A:管理区域の条件に外部被曝も内部被曝もあり、現実には両者合わせての線量限度が定められています。従って法律的概念は「内部被曝+外部被曝」の値が年間1mSvであると解釈するのが正解です。チェルノブイリの放射線区分では内部被曝と外部被曝の合計が用いられましたが、不当なことですが、日本では外部被曝のみの値で放射能汚染区分がなされました。
Q:東電福島第一原発事故の場合、法律に基づいた施策が取られたのですか?
A:法律の日本市民に対する線量限度は1mSvと規定されているのですが、時の政府は法律には全く取り入れられていない「年間20mSv」で規制致しました。関連してその他、原発事故の際の住民避難の補助として作成された「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)が公表されませんでした。また、緊急時住民除染基準が福島県によって勝手に引き上げられました。さらに、事故前の「原子力災害予防訓練」では必須と位置づけられていた「安定ヨウ素剤」が不配布となりました(東電関係者や福島医科大学の関係者全員には配布されました)。原子力災害特別措置法では対策現地本部が設けられることになっており、構成員として原発立地町が位置づけられていましたが、事故後の対策では除外されていました。
Q:年間20mSvはどのようにして決定されたのですか?
A:原子力災害特別措置法に基づいて「原子力緊急事態宣言」が発せられました。そこでは「原子力災害対策本部」が設置されその議を経て諸決定が成されることになっています。しかしながら実際には、線量限度の明確な決定・国民に対する周知も無く、適用範囲も定めること無く、行政文書の文科省の「福島県教育委員会等宛の通知「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について(通知)」として20mSvが通知されました。正式な決定の議が成されていません。この通知文章には日本の法律(1mSv被曝限度)のことは全く触れられず、法律には盛り込まれていない「国際放射線防護委員会」の引用のみが記述されています。
Q:国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)で、東電事故と同じくレベル7に位置づけられたチェルノブイリ原発事故(1986)があります。ここでは事故後5年にして発布されたチェルノブイリ法がありますが、日本の対処方法はどこが違うのですか?
A:チェルノブイリ法と呼ばれるのは二つの法律から成ります。一つは「憲法で保障された人権」をどう守るか?という内容の保護の具体化を図る法律と、もう一つは放射能汚染区分の詳細な位置づけです。汚染区分は内部被曝と外部被曝の合算である吸収線量の外にセシウム137汚染とプルトニウム汚染の初期汚染量による3つの区分基準によります。吸収線量だけで言及すると、年間1mSvで移住の権利、5mSvで移住義務となります。チェルノブイリ法では年間1mSv以上の汚染で「移住の権利」が明記されますが、日本では一切「住民の権利」という概念の無い「統治」でした。チェルノブイリ法は生活の維持も含めて長期の生存権保障となっていますが、日本ではチェルノブイリ法が成立した事故後5年目で、早くも避難区域の縮小が始まりました。短期で「指定区域外避難者」への支援は停止されました。ちなみに日本では通称「子ども被災者支援法」が作られましたが、この法律では「被曝を 避ける権利」「生活権」などの概念は無く、その上、この法律が適用される被曝限度を特定せず「一定基準」とし、支援内容も「基本方針」を向後作成して具体化することにし、法律としては具体化しませんでした。加えて引き継いだ自公政府が「一定基準」を「相当な線量」に置き換え、法の精神を換骨奪胎しました。
Q:東電原発事故では放射線防護について真実が語られましたか?
A:放射線被曝に関しては放影研「寿命調査第14報」では長年の被爆者調査から事実として放射能の影響の出る「しきい値」はゼロであると報告しています。即ち低線量でも統計的に有意な健康影響(がんその他)が生じることを調査結果として発表しました。放射能被曝は可能な限り避けることが第一原則です。しかしながら事故後では真実は語られ図、逆に内部被曝を勧めるものでした。例えば、①山下俊一氏(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)は「放射線の影響は、実はニコニコ笑っている人にはきません。くよくよしている人にきます。これは明確な動物実験で分かっています」(いわき市、福島市講演会)、「100ミリシーベルト以下では明らかな発がんリスクは起こりません」、「風評被害が福島の人が晒されている最大の危険」(二本松市講演会)等と被曝を避けることを語らずに明らかな虚言を弄しています。
Q:メルトダウンの原因は正しく解明されましたか?
A:メルトダウンの原因は地震動が直接的な原因では無く、「津波の襲来」による電源喪失であるとされています。しかしながら福一1号機では地震動により炉心の冷却水循環モニターの細管が破断して地震後1分30秒(津波の到来は51分後)で冷却水の自然循環が止まったことが報告されています。自然循環が止まると冷却能力が停止し、メルトダウンの原因となります。地震大国の日本での原発稼働はきわめて危険であることになります。再稼働などとんでもないことになります。メルトダウンの最大原因が隠蔽されている可能性が大なのです。日本市民の事実を正しく知る権利が脅かされているのです。
Q:食品の放射能汚染からは日本市民は守られたのでしょうか?
A:食品の放射能基準は「100Bq/kg」と設定されました。そして、「100Bq/kgは安全である」と大宣伝されました。しかし、放射能は被曝しないことが第一原則です。健康の保護を第一と考えるのならば、正しくは次のように言うべきです:「放射能に汚染された食品は食しないことが第一です。しかし、流通上ヤムを得なく市場に出すことに致しますが、リスクが伴います。免疫力の低下した方などは場合によっては命を落とすこともあり得ます。どうかそのことを良く御承知の上、覚悟してお食べ下さい」と説明しなければなりません。日本政府は日本市民に内部被曝を強制するキャンペーンを張ったのです。
Q:『食べて応援』、『風評被害払拭』は何だったのでしょう?
A:チェルノブイリでは「移住義務」である5mSv以上の汚染地帯に日本では100万人以上の方が、住み続けることとなりました。そして米野菜を生産して売らなければ「喰っていけない」状況に追い込まれました。汚染地で生産される食材を「被曝承知」で全国の消費者に食べてもらわなければならない関係を政府は作りました。そこで、「食べて応援」、「風評被害払拭」をキャンペーンしました。放射能以外の健康被害因子の場合は率直に「感染防止」「危険原因の除去」等々を必ず真っ先に致します。しかし放射能の場合は他のあらゆる場合の対処方針とは180度異なり、「食べて応援(放射線被曝を呼びかける)」ことをしました。反面、人々が自身の健康を守るために食材の選択は当然で、食品の選択の自由は人格権の中枢部分を占めます。しかし、汚染食材を市民に食させるために政府は食品選択の権利を攻撃し、「風評被害」だとしたのです。このように日本では2重3重に悪政の連鎖があったのです。