以下は、柳原敏夫がチェルノブイリ法日本版条例のモデル案について、1つの草案として作成したもの(バージョン2)です。参考として紹介させて頂きました。
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◎ 2017年10月7日、チェルノブイリ法日本版条例のモデル案(柳原案)の初版(バージョン1) については->こちら。
以下は、今、「市民が育てるチェルノブイリ法日本版の会」で検討しているチェルノブイリ法日本版条例のモデル案について、1つの草案です。初版で予告したとおり、このたび、第2版にバージョンアップしたので、これを公表します。
・第2版に関して作成した文書の一覧(目次)は->こちら
・そのPDFは->こちら))。下線部分が改訂箇所です。
・改訂箇所がどこかは->こちら。その改訂理由についての解説は->こちらまで。
・改訂前の全文は->こちら
なお、ここでは条例のイメージを実感してもらうため、「伊勢市」という具体的な自治体の名前を出しましたが、皆さんが参考にする時には、自身が住む市町村の名前に置き換えて下さい。
以上、まだ私案ですが、皆さんの参考にしていただけたら幸いです。
柳原 敏夫
なお、その解説も できるだけ早期にアップします。
◆【チェルノブイリ法日本版】伊勢市条例案(柳原案)の解説(準備中).
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【チェルノブイリ法日本版】伊勢市条例(柳原案バージョン2)
【前 文】
伊勢市民は、全世界の市民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに健やかに生存する権利を有することを確認し、なにびとといえども、原子力発電所事故に代表される放射能災害から命と健康と生活が保障される権利をあることをここに宣言し、この条例を制定する。
他方、原子力発電所等の設置を認可した国は、放射能災害に対して無条件で加害責任を免れず、住民が放射能災害により受けた被害を補償する責任のみならず住民の「移住の権利」の実現を履行する責任を有すると確信する。その結果、この条例の実施により伊勢市が出費する経費は本来国が負担すべきものであり、この点を明らかにするため、国は、すみやかに地方財政法10条17号、同法28号に準ずる法改正を行なう責務を有すると確信する。
加えて、放射能災害に対して無条件の加害責任を負う国は、事故が発生した原子力発電所等の収束に従事する作業員に対しても、放射能災害により被害を被った住民と同様、当該作業員が放射能災害により受けた被害を補償する責任のみならず当該作業員の命・健康を保全する責任を有すると確信する。
もっとも、今日の原子力発電所事故の巨大な破壊力を考えれば、この条例の制定だけで放射能災害から伊勢市民の命と健康と生活を保障することが不可能であることを認めざるを得ない。したがって、私たちは、三重県の自治体、さらには日本の全自治体に対して、各自治体の住民の名において、この条例と同様の条例を制定すること、さらにはこれらの条例の集大成として、日本国民の名において同様の日本国法律を制定することを呼びかける。
さらに、原子力発電所事故が国境なき過酷事故であることを考えれば、わが国の法律の制定だけで放射能災害から日本国民の命と健康と生活を完全に保障することが困難であることも認めざるを得ない。したがって、私たちは、この条例制定を日本のみならず、全世界の自治体、各国に対して、原子力発電所を有する世界の住民の命と健康と生活が保障する自治体の条例、法律の制定を呼びかける。
この呼びかけが放射能災害から全世界の市民の命と健康と生活を保障する条約を成立させるための基盤となることを確信する。
伊勢市民は市の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
第1章 総則
第1条 (条例の目的)
この条例は、原発事故その他の放射能災害の発生から伊勢市の住民及び事故収束作業員の命、健康及び暮らしを守ることを目的とする。
第2条 (定義)
この条例において、次の各号に掲げる用語の定義は当該各号に定めるところによる。
①「放射能災害」とは、原子力発電所事故など、放射性物質が施設外に大量に放出される事故
をいう。
②「事業者」とは、原子力発電所等を所有し、放射能災害を発生させた事業者をいう。
③「放射能汚染区域」とは、放射能災害で放出された放射性物質により汚染された区域のことをいい、その区分は第8条に定めるものとする。
④「汚染区域住民」とは、放射能汚染区域に住居を定め、居住する市民をいう。
⑤「事故収束作業員」とは、被ばくする場所で、放射能災害の収束に関わるあらゆる作業に従事する者をいい、その具体的な内容は第9条に定めるものとする。
⑥「放射能災害被災者」とは、放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有し、放射能汚染区域に住む住民及び放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有する事故収束作業員をいう。
⑦「移住の権利」とは、移住権利区域に居住する住民が有する、第11条第2項に定める被ばくにより発生した損害賠償及び社会的支援を受ける権利をいう。
⑧「残留の権利」とは、移住権利区域に居住する住民が有する、第12条第1項に定める被ばくにより発生した損害賠償及び社会的支援を受ける権利をいう。
⑨ 「安全の権利」とは、放射能管理強化利区域に居住する住民が有する、第13条に定める社会的支援を受ける権利をいう。
⑩「避難の権利」とは、放射能災害発生直後の緊急避難(帰還を前提とする一時的な移転を意味する)に関して、移住権利区域に居住する住民が有する、第14条に定める社会的支援を受ける権利をいう。
⑪「生存の権利」とは、放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有する事故収束作業員が有する、第15条に定める被ばくにより発生した損害賠償及び社会的支援を受ける権利をいう。
⑫ 事故周辺区域とは、放射能災害発生の周辺区域で、事故発生後速やかに区域の範囲を規則で特定するものをいう。
第3条(基本理念)
放射能災害被災者となった伊勢市の市民は、移住の権利、残留の権利、安全の権利、避難の権利および生存の権利を有する。
第4条(救済の差別的取扱いの禁止)
法の下の平等を定めた憲法14条を踏まえ、放射能災害から人々の命と健康を救済するにあたっては、伊勢市の市民はひとしく扱われなければならない。
第5条 (影響を受けやすい人への配慮)
放射能災害から人々の命と健康を救済するにあたっては、放射能による影響を受けやすい胎児、子どもの命・健康が守られることを配慮して行われなければならない。
第6条 (予防的取組方法)
放射能災害から人々の命と健康を救済するにあたっては、1992年のリオデジャネイロ宣言を踏まえ、完全な科学的証拠が欠如していることをもって対策を延期する理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら対策を講じる方法(予防的取組方法)にのっとり、適切におこなわれなければならない。
第7条 (すべての関係者の参加)
放射能災害が国難であることを踏まえ、放射能災害から
人々の命と健康を救済するにあたっては、放射能災害に係るすべての関係者による積極的な参加のもとに行われなければならない。
第8条 (放射能汚染区域の区分)
放射能災害発生後いつの時点かを問わず、追加被ばく量(外部被ばくと内部被ばくの合計)の値または土壌汚染の3種類の値のいずれが以下に定める値を該当した放射能汚染区域を以下の定めに従い区分する。
区分
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区分名
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土壌汚染密度(kBq/m2)
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年間追加被ばく量
mSv/年
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セシウム137
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ストロンチウム90
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プルトニウム
|
1
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移住義務区域
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国の定めるものに拠る。
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2
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移住権利区域
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185以上
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5.55以上
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0.37以上
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1以上
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3
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放射能管理強化区域
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37~185
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0.74~5.55
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0.185~0.37
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0.5以上
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第9条 (事故収束作業員)
1 事故収束作業員は次の各号のいずれかに該当する者をいう。
①.事故収束作業員として従事した結果、健康被害が発生し、当該被害と収束作業との因果関係が確定した者。
②.従事の時期が次の場合に応じて、事故周辺区域で以下に定める作業日数を満たす者。
放射能災害発生後3ヶ月間までの間:作業日数を問わない。
放射能災害発生4ヶ月後から1年経過するまでの間:5日以上作業に携わった者。
放射能災害発生1年後から2年経過するまでの間:14日以上作業に携わった者。
③.従事の時期が次の場合に応じて、事故周辺区域で以下に定める作業日数を満たす者。
放射能災害発生4ヶ月後から1年経過するまでの間:1~4日作業に携わった者。
放射能災害発生1年後から2年経過するまでの間:13日以下作業に携わった者。
放射能災害発生2年後から4年経過するまでの間:30日以上作業に携わった者。
2 放射能災害発生から一定年数が経過するまでの間、住民設備建物の除染作業に14日以上携わった者は第1項3号の事故収束作業員とする。一定年数の数は事故発生後速やかに規則で特定する。
第2章 放射能災害被災者の権利
第10条 (総論)
1 放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有し、移住権利区域に住む住民は、汚染状況及び被ばくによる健康影響について国及び伊勢市から与えられた情報に基づいて、当該区域に住み続けるかそれとも移住(帰還を前提としない移転)するかを自ら決定する権利を有する。
2 第1項の場合において、移住を選択した住民は、第11条に定める移住の権利を有する。
3 第1項の場合において、残留を選択した住民は、第12条に定める残留の権利を有する。
4 放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有し、放射能管理強化区域に住む住民は、第13条に定める安全の権利を有する。
第11条 (
住民が移住を選択した場合の権利)
1
第10条の場合において、住民が移住を選択するにあたっては、次の条件を満たすことが必要である。
①.移住について、未成年者を除き、世帯全員が同意すること。
②.移住先が第8条に定める区分1から3の「放射能汚染
区域」でないこと。
2、
第10条の場合において、移住を選択した住民は以下の権利を有する。その詳細は規則で定める。
①.引越し費用の支給
②.移住先での住宅確保・就労支援
③.移住元の不動産・家財・汚染した生産物(魚も含む)の損失補償
④.医療品の無料支給
⑤.健康診断・保養費用の7割支給
⑥.被災者手帳の交付
⑦.年金の優遇
3 前項の権利は特段の理由がない限り、1回の移住にしか適用されない。
第12条 (
住民が残留を選択した場合の権利)
1
第10条の場合において、残留を選択した住民は以下の権利を有する。その詳細は規則で定める。
①.治療の無料化
②.医療品の無料支給
③.健康診断・保養費用の7割支給
④.汚染した生産物(魚も含む)の損失補償その他の生活支援
⑤.被災者手帳の交付
⑥.「放射能食品管理課」等必要な部署を設け、放射能による食物・水道水の汚染を検査し、無用な被ばくをさせない。
⑦.年金の優遇
2 第1項の残留を選択した
住民がのちに移住を選択する場合には第11条が適用される。
第13条 (放射能管理強化区域に住む住民の権利)
放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有し、伊勢市の放射能管理強化区域に住む住民は、以下の権利を有する。その詳細は規則で定める。
①.医療品の無料支給
②.健康診断・保養費用の5割支給
③.被災者手帳の交付
④.「放射能食品管理課」等を設け、放射能による食物・水道水の汚染を検査し、無用な被ばくをさせない。
⑤.年金の優遇
第14条 (放射能災害発生直後の住民の権利)
1 伊勢市は放射能災害発生と同時に、予め編成した緊急事態対策課及び有識者による緊急事態判定委員会を直ちに始動させ、同委員会に速やかに本条第2項に定める判定を行なわせるものとする。
2 第1項の場合において、緊急事態判定委員会が国及び伊勢市から与えられた情報に基づいて、伊勢市の全域または一部が第8条に定める移住権利区域に該当すると判定した場合、当該区域に住む住民は、以下に定めるほか避難に必要な措置を求める権利を有する。その詳細は規則で定める。
①.自身とペット(事前登録要)に安定ヨウ素剤の事前配布
②.緊急時の放射能影響予測ネットワークシステムの情報提供
③.バス等の移動手段の提供
④.防護用マスク、カッパなど防護装備の提供
⑤.避難先の住居・食料・衣類・薬の提供
3 (削除)
第15条 (事故収束作業員の権利)
放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有する事故収束作業員は、以下の権利を有する。その詳細は規則で定める。
①.医療品の無料支給
②.健康診断・保養費用の減免
③.住環境の改善・支援
④.公共料金・公共交通機関の減額
⑤.有給休暇・解雇・異動時の優遇
⑥.被災者手帳の交付
⑦.年金の優遇
第16条 (予算措置)
次の2案を併記する。
(第1案)
1 この条例の実施により伊勢市が経費を出費した場合、伊勢市は、放射能災害発生の原因となった原子力発電所等の設置者及び設置許可した国に対して、当該経費の求償権を有する。
2 伊勢市は、この条例の実施により伊勢市が出費する経費に充てるため、前項に定める原子力発電所等の設置者及び設置許可した国に対して、法定外目的税を課するものとする。その詳細は別途条例で定める。
(第2案)
1 この条例の実施により伊勢市が経費を出費した場合、伊勢市は、放射能災害発生の原因となった原子力発電所等の設置者、設置許可した国及び設置に同意した者に対して、当該経費の求償権を有する。
2 伊勢市は、この条例の実施により伊勢市が出費する経費に充てるため、前項に定める原子力発電所等の設置者、設置許可した国及び設置に同意した者に対して、法定外目的税を課するものとする。その詳細は別途条例で定める。
第17条 (汚染状況の測定及び公表)
伊勢市は、放射能災害が長期にわたるカタストロフィーであることにかんがみ、正確な汚染状況を把握するため常時、汚染の測定に努め、測定結果を直ちに市民に公表する。
第18条 (委任)
この条例に定めるもののほか、この条例の実施について必要な事項は、規則で定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、 年 月 日から施行する。