育てる会のメンバー三宅征子さんから、以下の動画を教えてもらいましのたで、三宅さんの感想文と共に紹介します。
フランス人の核物理学技師で市民放射線調査情報委員会測定分析室長のブルーノ・シャルロンさん、311直後に福島入りした彼の、「311から10年」の教訓についてのお話です。
◎フランス・クリラッド(放射能に関する調査および情報提供の独立委員会)シャルロンさんのインタビュー「フクシマの教訓」を観て
調布 三宅征子
シャルロンさんが強調していた「フクシマは何も解決していない。にも拘わらず、日本政府は避難した住民を帰還させようとする強い、そして明確な意思があった。そのために二つのことを強行した。一つは、被ばく許容限度を20倍に引き上げたこと。もう一つは、避難者への支援を打ち切り、帰還せざるを得ないようにしたこと。」を聞いて考えました。
さらに、インタビュアーの問いかけ「日本のような民主国家がなぜ情報を提供し住民を避難させなかったのか」は、民主的国家であれば、情報に基づき住民を避難させるのが当然と認識されている前提があります。
この問いに対してシャルロンさんは、「日本の場合、権力構造、哲学的な問題、人口密度が高い、などがあると思うが、」と答えていました。
権力構造の問題はどの国でもあるでしょう。人口密度の問題は、そもそも原発を設置した時から分かっていたことです。哲学の問題とは?日本は自然災害の多い国です。それに対する人々の諦観的な対応を言っているのかもしれません。
しかしなぜ日本政府は、被害者にとって過酷で、世界の常識的な判断を無視した行動を取るのか、その行動は、どこから、何のために出て来るのかをあらためて考えずにはいられません。
2020東京オリンピックが決まったのは2013年9月。安倍首相のアンダーコントロール発言が、その後の原発政策を決定づけたのでしょうか。公害に学んできたはずの日本ですが、原発だけはその枠外に置かれた特別事項なのでしょうか。
許容限度を20倍に引き上げ、支援を打ち切ることで避難者を強制帰還させるという、世界からみた非常識を強行した背景に、五輪マネー、原発マネーとの癒着が見て取れるような気がします。
シャルロンさんは言います。「人類は核エネルギーを支配することはできない。核とは共存できない。」「原子力・原発産業は、保険が掛けられていない極めて稀な産業だ。」と。そして、「市民が、情報、知識、現状の理解を得て、司法に有効に訴えることができるようにするためにも、政府機関に対抗する市民のための専門家組織が必要だ」と。
子ども脱被ばく裁判における弁護団とその支援者の専門家集団が、日本において望まれている専門家組織の一つに当たるのではないでしょうか。裁判の経過を通しての知見の集積や新たな問題の提起をみてそう思います。
私たち市民はその活動を支えながら、政府の政策を改めさせ、原発で被害を受けた方々がまっとうな支援を受けられるまで、諦めずに粘り強く行動していかなければならないと思います。