用意したレジメが足りず、カフェが満員になる盛況ぶりでした。
仕事柄、「人を見て法を説け」が身上なので、この日は、マスコミからの情報では知りえない、チェルノブイリ、福島で起きた現実、エピソードの紹介に力点を置きました。
また、プレゼン資料は、北海道・土浦の学習会用のものを読みやすく編集し直しました。
以下、その動画とプレゼン資料&配布資料です。
会場の都合でカメラの位置を十分確保できず、自撮りのせいもあり、(柳原の頭の)見苦しい部分があることをご容赦下さい。
◆動画
柳原の話(1)
柳原の話(2)
柳原の話(3)
◆プレゼン資料(全文のPDFは->こちら)
◆ 配布資料(PDFは->こちら)
戦争と平和--過去は変えられる。「成年よ、抵抗を抱け」--
2018.11.29
at国立 柳原敏夫
はじめに、自己紹介
自然界(人間と自然の関係)に惹かれてきた
自然界(人間と自然の関係)に惹かれてきた
→「ファーブル昆虫記」「シートン動物記」「大草原の小さな家」「ターシャ・チューダ-」
「人間と人間の関係」から目を背けては生きていけないことを思い知らされるようになる。
→先端科学技術がもたらした未曾有の力業(バイオ)と未曾有の人災(生物災害)との出会い。
「人間と人間の関係」から目を背けては生きていけないことを思い知らされるようになる。
→先端科学技術がもたらした未曾有の力業(バイオ)と未曾有の人災(生物災害)との出会い。
「ケーテ・コルヴィッツ」「住井すゑ」「ハンナ・アーレント」「カズオ・イシグロ」
第1部 戦争
1、原発事故がもたらした最大の謎
原発事故とは何か?何だったのか?何をもたらしたのか?
なぜなら、311以後、明らかにかつてない異変が起きた。にもかかわらず、その意味も原因もよく分からないまま――その理由は福島原発事故が何だったのか、その全体像を理解できないからではないか。
2、この謎に最も迫った人のひとり
「スベトラーナ・アレクシエービッチ」‥‥小さき人々の声を残した。
◎人々はチェルノブイリのことは誰もが忘れたがっています。最初は、チェルノブイリに勝つことができると思われていた。ところが、それが無意味な試みだと分かると、今度は口を閉ざしてしまったのです。自分たちが知らないもの、人類が知らないものから身を守ることは難しい。チェルノブイリは、私たちを、それまでの時代から別の時代へ連れていってしまったのです。その結果、私たちの目の前にあるのは、誰にとっても新しい現実です。‥‥ベラルーシの歴史は苦悩の歴史です。苦悩は私たちの避難場所です。信仰です。私たちは苦悩の催眠術にかかっている。‥‥何度もこんな気がしました。これは未来のことを書き記している
◎原発事故はこれまでの災害の概念が通用しない。過去に経験したことのない経験をしたのだという新しい意識が必要で、その新しい意識で原発事故と向き合わなければならない。
◎チェルノブイリ事故で、人々は死がそこにあることを感じました。目に見えない、音も聞こえない、新しい顔をした死を。私は思いました、これは戦争だ。未来の戦争はこんなふうに始まる。でもこれは前代未聞の新しい戦争だ、と。
3、戦争の問題に最も迫った人のひとり
「大岡昇平」‥‥無名の兵士の声、行動を再現した。
◎ひとりひとりの兵士から見ると、戦争がどんなものであるか、分からない。単に、お前はあっちに行け、あの山を取れとしか言われないから。だから、自分がどういうことになって、戦わされているのか分からない。(「レイテ戦記」のインタビュー)
「3.11のあと、ひとりひとりの市民から見ると、福島原発事故がどのようなものであるか、どうしたらよいのか、真実は分からない。単に、『健康に直ちに影響はない』『国の定めた基準値以下だから心配ない』とかしか言われないのだから。だから、一体自分がどういう危険な状態にあるのか、どう対策を取ったらよいのか、本当のことは分からない。」
4、3.11福島原発事故とは何か。
単なる事故ではなく、それは事件、政変だった。311以後、私たちは過去に経験したことのない、「見えない異常な時代」に突入した。
単なる事故ではなく、それは事件、政変だった。311以後、私たちは過去に経験したことのない、「見えない異常な時代」に突入した。
5、3.11以後の気分
打ちのめされ、立ちあがれないくらい落ち込む連続だった。その最大の理由は認識が足りないこと、311以後の現実=「見えない異常な時代」に対する認識が足りないからではないか。
6、3.11以後の課題
第1に、311以後の未曾有の現実を認識する勇気を持つこと。
第2に、その現実認識に匹敵する理想=「現実を変える行動」とは何かを構想すること。
第2に、その現実認識に匹敵する理想=「現実を変える行動」とは何かを構想すること。
第3に、単に311以後の現実に対し、単にNOと言うのではなく、YESという理想に向かうこと。
7、3.11以後の現実
「自然と人間の関係」と「人間と人間の関係」を区別して現実を認識する必要がある。
8、「自然と人間の関係」:放射線の被ばくとは何か?
・放射線災害は自然災害とは違う(菅谷昭松本市長)
・年間1mSvとは、「毎秒1万本の放射線が体を被ばくさせる状態が1年間続くこと」(矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授))
・即死のレベルである10シーベルトの放射能これを通常のエネルギーに置き換えると10ジュール/kg。これは体温をわずか0.0024度上げるにすぎない。たったこれだけのエネルギーが人間に即死をもたらすのはなぜか?(落合栄一郎さん)
9、「人間と人間の関係」――「全てがあべこべ」の「見えない廃墟」の世界の出現――
チェルノブイリ事故の「希望」と「犯罪」のうち、希望は用意周到に踏みにじられ、犯罪がより徹底して反復された。
子どもの命・人権を守るはずの者が「日本最大の児童虐待」「日本史上最悪のいじめ」の当事者に。
福島県は、甲状腺検査の二次検査で「経過観察」とされた子ども(2018年6月末で3316人)が、その後「悪性ないし悪性疑い」が発見されても、その症例数を公表しない。
加害者(加害責任を負う日本政府)が救済者の面をして、命の「復興」は言わず、経済「復興」に狂騒。
被害者(避難者も残留者も)は「助けてくれ」という声すらあげられず、経済「復興」の妨害者として迫害→密猟者が狩場の番人を。盗人が警察官を演じている。狂気が正気とされ、正気が狂気扱いされる
第2部 平和
1、3.11以後の課題
「全てがあべこべ」の「見えない廃墟」という未曾有の異常事態をただすこと。
「全てがあべこべ」の「見えない廃墟」という未曾有の異常事態をただすこと。
→そのエッセンスはシンプル。「私たちの運命は私たちが決める」「おかした誤りは放置せず、ただす」
2、3.11以後の具体的課題「被ばくから命・健康と生活を守るための4つの市民アクション」
①.国内-チェルノブイリ法に匹敵するチェルノブイリ法日本版(原発事故避難の権利法)の制定
②.国際1-チェルノブイリ法に匹敵するチェルノブイリ法条約(原発事故避難の権利条約)の成立
③.国際2-(スペイン・アルゼンチンほか)で、日本政府の責任者を「人道上の罪」で刑事告発。
④.生活再建-市民の自主的相互扶助の自立組織=社会的経済・連帯経済(協同組合、ワーカーズ、市民バンク、市民通貨)の創設
3、311以後の「あべこべ」をただし、正常化に向かう道
過去の災害の経験や考えが通用しない原発事故の本質を理解するための「認識の目覚め」に努め、「苦悩という避難場所」から抜け出し、「現実の避難場所」を作り出す必要がある。
「新しい形式の戦争」にふさわしく、「新しい内容と形式を備えた平和(救済)」が必要。
→それが、放射能に対する健康被害を「予防原則」に立って救済を定めたチェルノブイリ法日本版。
4、3.11以後の正常化はいかにして可能か—過去を変えることを通じて――
未来は変えられるか? 可能である。なぜなら過去は変えられるから。
311以後、明らかになったこと→職業的専門家にお任せの「間接民主主義の機能不全・破綻」
311以後の異常事態を是正する道、その可能性の中心は「もうひとつのあべこべ」として出現した「市民の自己統治」(直接民主主義・連帯経済)の中にある。
そのために、私たちは「過去を変える」必要がある。
2016年来日したアレクシエービッチさんは言った「日本には抵抗の文化がない」
2016年来日したアレクシエービッチさんは言った「日本には抵抗の文化がない」
しかし、彼女は公式の日本史しか知らない。私達の過去には輝かしい抵抗の文化があり、埋もれている。
1872年 江藤新平らが、司法権の独立と民が官を裁く先進的な行政訴訟を作る。
1954年、杉並の主婦から始まった水爆禁止署名運動
1964年、三島・沼津の「石油コンビナート反対」の市民運動
1969年、歴史的な公害国会を引き出した東京都公害防止条例制定の市民運動
1995年、霞ヶ浦再生を、市民型公共事業として取り組んだアサザ・プロジェクト
1997年、市民主導で成立した最初の条約、対人地雷禁止条約の成立。
1999年、市民主導で、本各地の条例制定の積み上げの中から制定を実現した情報公開法
2017年、市民主導で成立した2番目の条約、核兵器禁止条約の成立。
5、次は我々の番だ。
2018年3月、チェルノブイリ法日本版制定を進める市民運動の組織として、「市民が育てる『チェルノブイリ法日本版』の会」がスタート。
次は日本各地で、NOではなく、YESという抵抗のアクションを起す、クラークとベラルーシ出身の画家シャガールに倣って。
成年よ、抵抗を抱け。
最初から失敗することがわかっているような冒険でも、そこがパリであれば、
冒険を冒す価値がある。それがパリだ。
(2018.11.29)