市民が育てる「チェルノブイリ法日本版」の会の基本情報

2017年12月19日火曜日

【お知らせ】2月25日、光塾講演会(後半)「さよなら孤独、気立てのよい喜怒哀楽の法、チェルノブイリ法日本版制定への道」

※ 講演会のチラシができました。-> 表面  裏面


2月25日(日)13:30から、渋谷の光塾で、以下の2人の講演会を行います。
皆さんの参加をお待ちします。

前半
◆◆「臨床医が語る、原発事故からの7年 ―子どもの甲状腺がんは?健康被害は?」◆◆
 
 牛山元美さん(さがみ生協病院 内科部長 3.11甲状腺がん子ども基金 顧問)
 
 
 
 ●牛山さんからのメッセージ:
原発事故後、子どもが通う神奈川県の小学校の放射能汚染の現実を知ったことから、被ばくについての勉強を始めました。福島の方々の声を聴き、子ども・若年者の甲状腺がんにまつわるさまざまな問題を知る中で、放射能汚染や被ばくによる健康障害を軽視する奇妙な社会に気づきました。臨床医として、当然ながら健康や命を大切にする社会を願い、そのために、私が入手・理解できた情報をたくさんの方にお伝えしたいと思っています。

 後半
◆◆「さよなら孤独、気立てのよい喜怒哀楽の法、チェルノブイリ法日本版制定への道」 ◆◆
  
 ●柳原敏夫(ふくしま集団疎開裁判 元弁護団長)

  水の連帯(2016年8月カナダ・モントリオールで開催された「世界社会フォーラム」に集まった世界市民)
柳原からのメッセージ:
 福島原発事故は二度発生しました。一度目は原発の中で偶然と技術の未熟さから、二度目は私達の社会の中で確信と世論操作によって。いま私達を最も苦しめているのは二度目の事故です。その結果、汚染地の子供達は「見えない収容所」に閉じ込められました。これは国際法に照らし「人道に対する罪」に該当する、戦後日本史上最悪の人権侵害です。これをただすことは先に死んでいく大人の責任です。それが12月16日に急逝した早坂暁の遺言「水でつながり、気立てのよい喜怒哀楽の法、チェルノブイリ法日本版を地上に残したい」()です。

 日時:2018年2月25日(日) 13:30~ (開場13:00) 
 会場:光塾 ->(公式サイト)   東京都渋谷区渋谷3-27-15 光和ビル地下1階 (JR渋谷駅新南口すぐ マクドナルド向かい->地図)    TEL 090-8494-3856(岡田)
 資料代:500円
 主催:脱被ばく実現ネット(旧ふくしま集団疎開裁判の会)


当時海軍兵学校の生徒だった15歳の早坂暁は、原発投下直後に広島入りをし、「地球の終末の光景、世界の臨終の景色」を見た。のちに当時の生徒が集まると、最後は決まってあの光景の話になった。

「おい、あの時、赤ン坊が泣いていなかったか」
「赤ん坊?」
「確かに、聞こえたんだ。赤ン坊の泣き声がしていた」
「まさか‥‥」
あの雨の降る廃墟の中で、赤ン坊が棄てられて泣いている光景は、たまらない。
「いや、棄てられた赤ン坊じゃない。母親が抱いている赤ん坊だ。あの廃墟の中に住んでいた人たちだって、いたんだろう」
「うん、そうかも知れんな」
「確かに、赤ン坊の泣き声がした。ぼくはこの耳で聞いたんだよ」
「‥‥そう言えば、 おれも聞いたような気がする」
38年前の記憶はダリの時計のように溶けてしまっている。しかし、私たちは、赤ン坊の泣き声を懸命に思い出そうとしていた。あの光景の中で、もし赤ン坊の泣き声が聞こえていたら--救われる。
「いや、おれも確かに聞いた。忘れてしまっていたが、今思い出した」
暗い思いにとりつかれると言っていた医者が一番強く主張しはじめた。
 「‥‥ああ、赤ン坊が泣いていたな」

 あの時の、あの赤ン坊が夢千代である。
                                (「夢千代日記」のあとがき)

 それから56年後に
発生した福島原発事故の時にも、廃墟の中で赤ン坊の泣き声がした。しかし、人々は目の前の未曾有の出来事に翻弄され、目を奪われ、赤ン坊の泣き声のことを忘れてしまった。そして、暗い思いにとりつかれた。しかし、赤ン坊は廃墟の中で棄てられてはいなかった。お母さんがしっかり抱いていた。だから、耳をすませば、赤ン坊の声が今も聞こえて来るはずだ。
もし耳をすました人が、
「確かに、赤ン坊の泣き声がした。ぼくはこの耳で聞いたんだよ」
と言ったら、ほかの人たちもきっと赤ン坊の泣き声を懸命に思い出そうとするだろう。あの光景の中で、もし赤ン坊の泣き声が聞こえていたら--救われる。

 あの時の、あの赤ン坊がチェルノブイリ法日本版である。それが早坂暁が大人に残した遺言です。 


同時に、早坂暁は、どうしたら私たち大人が、あの赤ン坊の泣き声に応えることができるようになるのか、これを考え続け、次のようなビジョンに到達しました。それが、
気立てのよい人間たちによる水の連帯で、気立てのよい法律を作ること。

これについてズケズケ語ったのが、1990年の岩波ブックレット「恐ろしい時代の幕あけ」です。


◎気立てのいい人
21世紀になったときにいちばん貴重で、尊重される人は誰か。それは、気立てのいい人です。気立てのいい人が宝になります。頭のいいのはいっぱいいます。そんなんもはコンピュータが代わりをしてくれます。ぜったいにこれから大事になってくるのは、(コンピュータには代わりができない)気立てのいい人です。人間関係をうまく処理できて、相手のことを考えて優しい人。ですから、今こそ気立て大学というのがあってもいいわけです。
では、気立てがいいとはどういうことか。平たく、具体的にいいますと、情けですね。情けがわかることです。情けなんていうと非常に古くさい言葉ですが、、相手側の視点がわかるということです。切り返しの視点を持っているということです。  
向こうから見たらどうみえるのか。映像的にいえば、二台のカメラを持っているのが気立てだと思います。つまり殺される側のゴキブリから見た目をイメージできる人が、気立てのいい人です。
(・・・ゴキブリから見た目をイメージできる人なんて、ウーマンラッシュアワーの漫才みたいではないか)
どうかゴキブリから見た目をいぢど想像してほしいのです。相手側のショットがある、向こう側のショットがあるというのが気立てのいい人です。気立ての悪い人はこちら側のショットだけですから、相手の立場とか、そういうのはわからない。相手の痛みが分からない。自分のエゴだけを押している。そういうのが気立ての悪い人だとぼくは思います。》 
(・・・経済復興のショットだけしか言わない人たちは気立ての悪い人たち、その通り!)
向こうのショットがイメージできる。実はそれがほんとに頭のいいことなのですが、いまの頭のよさというのは、記憶や試験の技術であると、そこへ子どもたちを追いこんでいます。
いい大学を出て、いい暮らしを保障されなさいと、親は学校と共謀して子どもたちを気立ての悪い子にしていっているのです。

 ◎水でつながる
これからは血でつながらないほうがいいと思う。血でつながった形は崩壊しつつあるわけですから、今度は水でつながったほうがいい。他人でつながったほうがいいと思います。
・・・でも、みなさん、ぼくなどもそう思うのですが、いま生活しているなかで、血でつながる人たちとは年に数回会うか会わないでかでしょう。大半は他人と暮らしているのです。友だち、仲間、つまり水の関係のひとたちのほうがはるかに濃いのです。ですから、血でつながるということをやめて、もうちょっと水でつながることを大事にしたらいいのではないかと思います。
いや、水っぽいほうがいいのです。血でつながると、恨みとか、愛憎が強く出てきますから、水で繋がったほうが淡白で、さっぱりしていて、いいです。あとくされもないし、要求することも、もたれかかりも少なくなります。
21世紀は、どれだけ上手に水でつながることができるかどうかによって、悲惨な人とうまくいく人とに分かれてくるでしょう。血に執着する人は21世紀でものすごく悲惨になると思います。水の連帯のことを考える人は、わりと21世紀もうまくいくのではないでしょうか。》 
ですから、これからぼくも水ドラマが書きたいです。考えてみるとぼくには水ドラマが多いようです。あまり血でつながるホームドラマは1本しか書いたことがありません。「夢千代日記」なんてぜんぶ水の関係でしょう。ぜんぶ他人同士が集まって暮らしている。ああいうのを水ドラマというのです。
 (・・・水ドラマの古典が「東京物語」だとすれば、近時の傑作は「家族ゲーム
考えてみると、血でつながるから民族が生じ国ができて、国境をつくり、戦争まで起きてしまうわけでしょう。あれが水でつながっていたら戦争は起きない。民族なんていわないほうがいい。人間というだけでいい。
そういうふうに、ちょっと組み合わせを変えていけば、社会は一変するし、もちろん、そうすると学校なども一変する。偏差値などまったく消えてしまいます。早くそういう時代がくればいと思います。
でも、こんなことは実は、親の決心ですぐ決まるのです。親の決心で世の中の眺めは一変するのです。
(・・・そうだ!旧ソ連のチェルノブイリ法の制定も大人の決心次第で、あっという間に実現した。それは、ものすごく遠くて、ありえないほど近いもの)。 

 ◎気立てのよい、喜怒哀楽の法、チェルノブイリ法日本版
では、早坂暁にとって「 気立てのよい、喜怒哀楽の法」とは何でしょうか。
とはいっても、「気立てのいい人」のイメージを彼の代表作「夢千代日記」の夢千代から連想するのは早計です。一方で、彼は、《大学時代に学生運動にかかわり公安当局からマークされ浅草に潜伏中、銭湯で知り合い、何度もプライベート旅行に行くなど親友となった》渥美清に無条件の共感、根本的な同一性を感じる人です。平賀源内が難事件を解決してゆく痛快時代劇「天下御免」、弱い者の恨みを晴らすプロの殺し屋を描いた「必殺からくり人」で本領を発揮した人です。
は、「気立てのいい人」の中に哀だけではなく、怒り、楽しみ、喜びの人間の感情の全てを見出しているのです。
だから、「 気立てのよい法律」とは、人間の喜怒哀楽を全てフォローした法律です。だから、それは、
:命が大切にされることにまさる喜びはない。
:原発を推進してきた国家は原発事故と事故に苦しむ子ども、人々に対し、無条件でこれを贖う責任がある。
:放射能汚染による故郷喪失は換え難い哀しみである。だから、避難者には、避難先で故郷回復権が認められなければならない。
:身体だけでなく、心も楽しみを維持し、大切にされてこそ命がまっとうされる。

「気立てのいい人」が喜怒哀楽を備えた人間であるように、「気立てのいい法律」とは、これらの喜怒哀楽を備えた法律のことである。それがチェルノブイリ法日本版です(そのモデルが->チェルノブイリ法日本版・伊勢市条例モデル)。

これが、私にプレゼントされた早坂暁の遺言です。

2017年12月18日月曜日

【お知らせ】2月22日、ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第51回「放射能災害から命,健康,くらしを守る――「チェルノブイリ法日本版」を市民立法で」

 ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)主催のアドボカシーカフェ第51回(第1回は2011年7月『原発事故と子どもたち』発言者中手聖一さん)
「放射能災害から命,健康,くらしを守る――「チェルノブイリ法日本版」を市民立法で」
が、来年2月22日、以下の通り開催されます。 
皆さんの参加をお待ちします。

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 福島原発事故の1ヶ月後、文科省はそれまで 1mSv としていた公衆被ばく限度線量を福島県だけ 20mSv に引 き上げる通知をし、今なおその正当な根拠が示されないままになっています。福島の子どもたちは“見えない放射線”にさらされ、閉じ込められているといえます。これは国際法に照らし「人道に対する罪」に該当する人権侵害であり、児童虐待との受け止め方もあります。これを正すため、福島の子ども14人が2011年6月、「安全な場所で教育を受けさせて!」と裁判所に訴えました(ふくしま集団疎開裁判)。しかし13年4月、仙台高裁は判決で「福島の子どもは危ない。避難するしか手段はない」と認めながらも、「危ないと思った子どもは自分で逃げればよい。被告(郡山市)に避難の責任はない」と訴えを退けました。人権救済の道を閉ざした裁判所に代わり、社会の責任として子どもたちを救済する法制度「チェルノブイリ法日本版」を市民の力で制定する運動を立ち上げ、いま原発の再稼動が始まった日本各地の自治体で条例制定を積み上げようとしています。この市民立法のアクションにみなさんはどう関わりますか。登壇者と対話し一緒に考えてみませんか。 

●登壇:
 ○柳原敏夫さん:
 法律家。専門は知財(著作権->HP「著作権その可能性の中心」)。20世紀末、知財が知罪に変貌したのを受け、命の危機をもたらすバイオ裁判(->HP「禁断の科学裁判」)に転向。3.11まで原発に無知だった無恥を知り、命を救うふくしま集団疎開裁判(->HP)に再転向。以後、脱被ばく問題に取り組む。昨年、2人の子は都内から西へ移住し、現在、妻、母(95歳)、犬(9歳)の4人暮らし。
  
 ○崎山比早子さん:
 医学博士。千葉大学医学部大学院卒。元マサチューセッツ工科大学研究員、元放射線医学総合研究所主任研究官、元国会事故調査員会委員。高木学校、原子力教育を考える会のメンバー、3・11甲状腺がん子ども基金代表理事。

 ○長谷川克己さん:
 福島原発事故当時、福島県郡山市に在住。原発事故の5ヵ月後に妊娠中の妻と5歳の長男を連れて静岡県富士宮市に自主的に避難。避難後、一念発起し起業。平成24年に高齢者のデイサービスセンターうつくしくらぶ、27年に障害児の放課後等デイサービスうつくしくらぶを開設。傍ら、避難当事者として市民運動に参加。


●日時:2018年2月22日(木) 18:30~21:00 (開場18:00) 
●会場:文京シビックセンター 4階  シルバーホール
  東京都文京区春日1-16-21 (丸ノ内線・後楽園駅1分、三田線/大江戸線・春日駅1分) 
●参加費:一般1,000円/学生500円  当日受付にてお支払いください。

●ご案内ページ:http://socialjustice.jp/p/20180222/

●お申し込みページ:https://socialjustice.jp/20180222.html
          事前にお申し込みください。

●主催・お問い合わせ先: 
認定NPO法人まちぽっと ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)
〒160-0021 新宿区歌舞伎町2-19-13 ASKビル5F 
メール:  info@socialjustice.jp
電話: 03-5941-7948     FAX: 03-3200-9250
ホームページ: http://www.socialjustice.jp/
Twitter: https://twitter.com/socialjusticef 
Facebook: https://www.facebook.com/socialjusticefundjp 
 
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以下、チェルノブイリ法日本版制定の市民運動についての基本情報です。

チェルノブイリ法日本版の条例制定を一緒にやりませんか(2017.5)

日本からのメッセージ(2017.6)

中間報告:【チェルノブイリ法日本版】伊勢市条例(柳原案)

【チェルノブイリ法日本版】伊勢市条例案(柳原案)の解説.

なぜ今、チェルノブイリ法日本版条例の制定なのか--チェルノブイリ法日本版その可能性の中心--

2017年10月3日火曜日

中間報告:【チェルノブイリ法日本版】伊勢市条例(柳原案)

以下は、今、私たちのグループで検討しているチェルノブイリ法日本版条例のモデル案について、1つの草案です。今後、さらにバージョンアップを目指していますが、とりあえず大枠ができたので、公表しました。
まだ私案ですが、皆さんの参考にしていただけたら幸いです。
                                                 柳原 敏夫
なお、以下はその解説 (パワーポイント文書)です。

  【チェルノブイリ法日本版】伊勢市条例案(柳原案)の解説.

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        【チェルノブイリ法日本版】伊勢市条例(柳原案)
【前 文】


伊勢市民は、全世界の市民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに健やかに生存する権利を有することを確認し、なにびとといえども、原子力発電所事故に代表される放射能災害から命と健康と生活が保障される権利をあることをここに宣言し、この条例を制定する。
他方、原子力発電所等の設置を認可した国は、放射能災害に対して無条件で加害責任を免れず、住民が放射能災害により受けた被害を補償する責任のみならず住民の「移住の権利」の実現を履行する責任を有すると確信する。その結果、この条例の施行により伊勢市が出費する経費は本来国が負担すべきものであり、この点を明らかにするため、国は、すみやかに地方財政法10条17号、同法28号に準ずる法改正を行なう責務を有すると確信する。
加えて、放射能災害に対して無条件の加害責任を負う国は、事故が発生した原子力発電所等の収束に従事する作業員に対しても、放射能災害により被害を被った住民と同様、当該作業員が放射能災害により受けた被害を補償する責任のみならず当該作業員の命・健康を保全する責任を有すると確信する。
もっとも、今日の原子力発電所事故の巨大な破壊力を考えれば、この条例の制定だけで放射能災害から伊勢市民の命と健康と生活を保障することが不可能であることを認めざるを得ない。したがって、私たちは、三重県の自治体、さらには日本の全自治体に対して、各自治体の住民の名において、この条例と同様の条例を制定すること、さらにはこれらの条例の集大成として、日本国民の名において同様の日本国法律を制定することを呼びかける。
さらに、原子力発電所事故が国境なき過酷事故であることを考えれば、わが国の法律の制定だけで放射能災害から日本国民の命と健康と生活を完全に保障することが困難であることも認めざるを得ない。したがって、私たちは、この条例制定を日本のみならず、全世界の自治体、各国に対して、原子力発電所を有する世界の住民の命と健康と生活が保障する自治体の条例、法律の制定を呼びかける。
この呼びかけが放射能災害から全世界の市民の命と健康と生活を保障する条約を成立させるための基盤となることを確信する。
伊勢市民は市の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

第1章 総則
第1条 (条例の目的)
この条例は、原発事故その他の放射能災害の発生から伊勢市の市民及び事故収束作業員の命、健康及び暮らしを守ることを目的とする。
第2条 (定義)
この条例において、次の各号に掲げる用語の定義は当該各号に定めるところによる。
「放射能災害」とは、原子力発電所事故など、放射性物質が施設外に大量に放出される事故
をいう。
「事業者」とは、原子力発電所等を所有し、放射能災害を発生させた事業者をいう。
「放射能汚染地域」とは、放射能災害で放出された放射性物質により汚染された地域のことをいい、その区分は第8条に定めるものとする。
④「汚染地域住民」とは、放射能汚染地域に住居を定め、居住する市民をいう。
「事故収束作業員」とは、被ばくする場所で、放射能災害の収束に関わるあらゆる作業に従事する者をいい、その具体的な内容は第9条に定めるものとする。
「放射能災害被災者」とは、放射能災害発生時に伊勢市の放射能汚染地域に住民票を有する汚染地域住民及び放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有する事故収束作業員をいう。
「移住の権利」とは、放射能汚染地域の移住権利地域に居住する汚染地域住民に保障される、本条例で定める被ばくにより発生した損害賠償及び社会的支援を受ける権利をいう。
⑧「避難の権利」とは、放射能災害発生直後の緊急避難に関して、放射能汚染地域の移住権利地域に居住する汚染地域住民に保障される、本条例で定める社会的支援を受ける権利をいう。
⑨「生存の権利」とは、放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有する事故収束作業員に保障される、本条例で定める被ばくにより発生した損害賠償及び社会的支援を受ける権利をいう。
第3条(基本理念)
伊勢市は原発事故被災者となった市民の移住の権利、避難の権利及び生存の権利を保障する。
第4条(救済の差別的取扱いの禁止)
法の下の平等を定めた憲法14条を踏まえ、放射能災害から住民の命と健康を救済するにあたっては、伊勢市民はひとしく扱われなければならない。
第5条 (影響を受けやすい人への配慮)
放射能災害から伊勢市民の命と健康を救済するにあたっては、放射能による影響を受けやすい胎児、子どもの命・健康が守られることを配慮して行われなければならない。
第6条 (予防的取組方法)
1992年のリオデジャネイロ宣言を踏まえ、放射能災害から伊勢市民の命と健康を救済するにあたっては、完全な科学的証拠が欠如していることをもって対策を延期する理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら対策を講じる方法(以下「予防的取組方法」という)にのっとり、適切におこなわれなければならない。
第7条 (すべての関係者の参加)
放射能災害が国難であることを踏まえ、放射能災害から伊勢市民の命と健康を救済するにあたっては、伊勢市に関わる、放射能災害に係るすべての関係者による積極的な参加のもとに行われなければならない。
第8条 (放射能汚染地域の区分)
 放射能災害発生後いつの時点かを問わず、追加被ばく量(外部被ばくと内部被ばくの合計)の値または土壌汚染の3種類の値のいずれが以下に定める値を該当した放射能汚染地域を以下の定めに従い区分する。
区分
区分名
土壌汚染密度(kBq/m2
年間追加被ばく量
mSv/年
セシウム137
ストロンチウム90
プルトニウム
強制避難区域
国の定めるものに拠る。
移住権利地域
185以上
5.55以上
0.37以上
1以上
放射能管理強化地域
37~185
0.74~5.55
0.185~0.37
0.5以上
第9条 (事故収束作業員)
1 事故収束作業員とは強制避難区域において放射能災害の収束に関わるあらゆる作業に従事する者をいい、以下に定めに従い区分する。
.区分1
事故収束作業員として従事した結果、健康被害が発生し、当該被害と収束作業との因果関係が確定した者。
.区分2
従事の時期が次の場合に応じて、以下に定める作業日数を満たす者。
放射能災害発生後3ヶ月間までの間:作業日数を問わない。
放射能災害発生4ヶ月後から1年経過するまでの間:5日以上作業に携わった者。
放射能災害発生1年後から2年経過するまでの間:14日以上作業に携わった者。
.区分3
従事の時期が次の場合に応じて、以下に定める作業日数を満たす者。
放射能災害発生4ヶ月後から1年経過するまでの間:1~4日作業に携わった者。
放射能災害発生1年後から2年経過するまでの間:13日以下作業に携わった者。
放射能災害発生2年後から4年経過するまでの間:30日以上作業に携わった者。
2 放射能災害発生から○年経過するまでの間、住民設備建物の除染作業に14日以上携わった者は区分3の事故収束作業員とする。
第2章 放射能災害被災者の権利
 
10条 (総論)
1 放射能災害発生時に伊勢市の移住権利地域に住民票を有する汚染地域住民は、汚染状況及び被ばくによる健康影響について国及び伊勢市から与えられた情報に基づいて、当該地域に住み続けるかそれとも移住(帰還を前提としない移転)するかを自ら決定する権利を有する。
2 移住を選択した汚染地域住民に対して、伊勢市は次条に定める移住に関する権利を保障する。
3 残留を選択した
汚染地域住民に対しては、伊勢市は第12条に定める権利を保障する。
4 放射能災害発生時に伊勢市の放射能管理強化地域に住民票を有する汚染地域住民に対し、伊勢市は第12条2項に定める権利を保障する。
11条 (移住を選択した場合の権利)
1 汚染地域住民が移住を選択するにあたっては、次の条件を満たすことが必要である。
①.移住について、未成年者を除き、世帯全員が同意すること。
②.移住先が第8条に定める区分1から3の「放射能汚染地域」でないこと。
2、移住を選択した汚染地域住民に対し、伊勢市は以下の権利を保障する。その詳細は規則で定める。
①.引越し費用の支給
②.移住先での住宅確保・就労支援
③.移住元の不動産・家財・汚染した生産物(魚も含む)の損失補償
④.医療品の無料支給
⑤.健康診断・保養費用の7割支給
⑥.被災者手帳の交付
⑦.年金の優遇
3 前項の権利は特段の理由がない限り、1回の移住にしか適用されない。
12条 (残留を選択した場合の権利)
1 伊勢市は、残留を選択した汚染地域住民に対し、以下の権利を保障する。その詳細は規則で定める。
①.治療の無料化
②.医療品の無料支給
③.健康診断・保養費用の7割支給
④.汚染した生産物(魚も含む)の損失補償その他の生活支援
⑤.被災者手帳の交付
⑥.
「放射能食品管理課」等を設け、放射能による食物・水道水の汚染を検査し、無用な被ばくをさせない。
⑦.年金の優遇
2 
放射能災害発生時に伊勢市の放射能管理強化地域に住民票を有する汚染地域住民に対し、伊勢市は以下の権利を保障する。その詳細は規則で定める。
①.医療品の無料支給
②.健康診断・保養費用の5割支給
③.被災者手帳の交付
④.「放射能食品管理課」等を設け、放射能による食物・水道水の汚染を検査し、無用な被ばくをさせない。
.年金の優遇
3 第1項の残留を選択した
汚染地域住民がのちに移住を選択する場合には第11条が適用される。
13条 (放射能災害発生直後の避難に関する権利
1 伊勢市は放射能災害発生と同時に、予め編成した緊急事態対策課及び有識者による緊急事態判定委員会を直ちに始動させ、同委員会に速やかに本条に定める判定を行なわせるものとする。
2 放射能災害が発生し、国及び伊勢市から与えられた情報に基づいて、伊勢市の全域または一部において放射能汚染が第8条に定める移住権利地域に該当すると緊急事態判定委員会が判定した場合、避難(帰還を前提とする移転)を求める当該地域の住民に対し、伊勢市は必要なあらゆる措置を取るものとする。その詳細は規則で定める。
2 放射能災害が発生し、緊急事態判定委員会が伊勢市の全域または一部において安定ヨウ素剤の服用が必要であると判定した場合、伊勢市は直ちに、当該地域の住民及びペット(事前登録要)に安定ヨウ素剤を配布し、服用できるようにする。
3 本条に定める緊急事態判定委員会の判定に必要な最新かつ正確な汚染状況を把握するために、伊勢市は国に対し、SPEEDIなど緊急時の放射能影響予測ネットワークシステムの情報提供を求めると同時に、事前に構築した伊勢市独自の放射能測定装置による情報収集に努める。
14条 (事故収束作業員の生存の権利
放射能災害発生時に伊勢市に住民票を有する事故収束作業員に対し、伊勢市は以下の権利を保障する。その詳細は規則で定める。
①.
医療品の無料支給
②.健康診断・保養費用の減免
③.住環境の改善・支援
④.公共料金・公共交通機関の減額
⑤.有給休暇・解雇・異動時の優遇
⑥.被災者手帳の交付
⑦.年金の優遇
15条 予算措置
次の2案を併記する。
(第1案)
1 伊勢市は、放射能災害発生の原因となった原子力発電所等の設置者及び設置許可した者に対して、この条例の施行により伊勢市が出費する経費全額を求償することができる。
2 伊勢市は、放射能災害発生の原因となった原子力発電所等の設置者及び設置許可した者に対して、この条例の施行により伊勢市が出費する経費に充てるために法定外目的税を課税する。その詳細は別途条例で定める。
(第2案)
1 伊勢市は、放射能災害発生の原因となった原子力発電所等の設置者、設置許可した者及び設置に同意した者に対して、この条例の施行により伊勢市が出費する経費全額を求償することができる。
2 伊勢市は、放射能災害発生の原因となった原子力発電所等の設置者、設置許可した者及び設置に同意した者に対して、この条例の施行により伊勢市が出費する経費に充てるために法定外目的税を課税する。その詳細は別途条例で定める。
16条 汚染状況の測定及び公表
 伊勢市は、放射能災害が長期にわたるカタストロフィーであることにかんがみ、正確な汚染状況を把握するため常時、汚染の測定に努め、測定結果を直ちに市民に公表する。
17条 (委任)
この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成 年 月 日から施行する。

2017年6月1日木曜日

日本からのメッセージ(2017.6)

日本からのメッセージ
2017年 6月

 チェルノブイリ原発事故のあと、日本政府は断言しました「日本はソ連とちがい、高度の技術を持っている。チェルノブイリのような事故は絶対起きない」と。15年後、福島原発事故が発生しました。日本はもとより、どの国ももう日本政府のように断言しませんでした。むしろ、事態はチェルノブイリ原発事故直後にIAEAのブリックス事務局長が断言した方向に進みました--チェルノブイリのような事故が毎年起こっても我々はびくともしない、と。つまり、彼らは世界に500基近くある原発が500年に一度、事故を起こす確率を覚悟したのです。そして、チェルノブイリと福島が証明したことは、原発事故のあと、事故は小さくされ、最大の被害を被るのは私たち市民であり、子どもだということです。今、チェルノブイリと福島の市民はその苦しみの中に置かれています。
そして、今日のチェルノブイリと福島の姿は明日の世界中の私たちの姿です。二度とこの悲劇を繰り返してはなりません。
 そのためには、原発事故から命と健康を守る最低限のセイフティネットとして、国際基準に基づき避難の権利を保障したチェルノブイリ法を国際条約として制定する必要があります。そのために、私たちは、今すぐ自分たちが住む町でできることを始めました。それがチェルノブイリ法日本版の条例制定の取組みです。以下が、その取組みを呼びかけた日本のお母さんの文章です。
 これを読み、賛同した方に対しては、皆さんが住む町でも、チェルノブイリ法の条例制定に取り組んでいただくことを願ってやみません。なぜなら、世界中の町でこの条例が制定されることは、皆さんが住む町ばかりでなく、チェルノブイリ法日本版がまだ制定されていない福島にとっても大きな支援になるからです。
 世界中の皆さんとつながって、私たち世界中の市民の力で、原発事故から私たちの子どもたちの命と健康を守りましょう。
皆さまからのご連絡をお待ちしています。 
法律家 柳原敏夫
(2012.10国連ジュネーブでの訴え)
 
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2017年5月1日月曜日

チェルノブイリ法日本版の条例制定を一緒にやりませんか(2017.5)

以下は、福島からの保養を熱心に取り組んでおられる伊勢市の上野正美さんが、2017年5月に、日本と世界の人たちに向けて、チェルノブイリ法日本版の制定の取り組みを呼びかけた文章です。
原文は-->こちら

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              チェルノブイリ法日本版の条例制定を一緒にやりませんか                                                 上野正美(ふくしまいせしまの会  代表)


私たちは福島原発事故後、非営利で保養や野菜支援、三重県への避難者・移住者の支援などを行なってきました。運営については会発足以来、みなさまからのご寄付や助成金で行って来ましたが、6年が経ち、民間にできることは限られたものだと感じています。

 しかし原発からまき散らされた放射性物質から日々発射される放射線の脅威を考えたとき、これらの取組みはまだまだ必要なものです。では、前例のない過酷事故に対して私たちはどうしたらよいのでしょうか。正直、途方に暮れます。しかし、幸い私たちには前例から学ぶべきお手本が2つあります。

 1つは放射能災害に対して命と健康と暮らしを保障したチェルノブイリ法です。これは、放射能災害に見舞われた人たちがひとしく守られるべき、放射能災害に関する世界最初の人類普遍の人権宣言です。これを参考に、日本でもそれに添うような法を作るべきだと強く感じています。

 もう1つは、「情報公開」の法律を日本各地の市民の手で制定した経験です。日本各地の自治体で地元市民と議員と首長が協力して情報公開の条例を制定し、その条例制定の積み重ねの中から1999年に情報公開法が制定されました。この経験を参考に、チェルノブイリ法日本版を条例制定からスタートすべきだと強く感じています。放射能災害から命と健康と暮らしを保障するチェルノブイリ法日本版の条例をあなたの住む自治体で市民の手で制定していきませんか。どうか、以下の文をご一読いただき、この条例制定の取組みに賛同し、そして、共に参加いただけますよう心からお願いいたします。

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チェルノブイリ原発事故から5年後、旧ソ連でいわゆるチェルノブイリ法が制定され、ウクライナ、ロシア、ベラルーシに引き継がれました。これら各国政府はチェルノブイリ法に則って、原発事故により放射能汚染された住民に避難の権利を保障し、また強制避難地域の住民の生活補償にあたってきました。3ヵ国ともに経済状況が良好とは言えないため、補償が法律通り実施できない状況ですが、少なくともチェルノブイリ法は原発事故の責任主体が国家であることを明記し、年間被曝量が1ミリシーベルトを超える地域に住むすべての住民に無条件で避難の権利を保障する画期的なものでした。

一方、福島では事故前の1ミリシーベルトの安全基準は事故後に20ミリシーベルトに引き上げられ、それが現在まで安全基準となり、帰還基準とされています。健康被害に対する救済についても、県民健康調査でこれまでに見つかった甲状腺がんは放射線が原因とは考えにくいとの理由から抜本的な対策が取られないままです。チェルノブイリ法が年間1ミリを基準として、原発事故で健康被害の可能性があればすべて救済しているのとは対照的です。実は旧ソ連でもチェルノブイリ原発事故直後、住民の許容被ばく線量が百倍に引き上げられ、チェルノブイリ法制定時にも100ミリシーベルトで問題ないとする見解もありました。しかし、事故処理にあたった労働者などの声に押され国際基準の1ミリになったものです。悲痛な原発事故を体験した日本でも、命こそ宝という原点に立って、良識ある市民がチェルノブイリ法日本版制定について声を上げ、その実現に向けて行動を起こすことが必要だと思います。

この取り組みに賛同し、参加してみたいと思う方は、私たちとつながり、一緒に条例のモデル案や条例制定の手順などを相談しながら取り組みませんか。         
                                                2017年5月


この呼びかけに賛同し、条例制定の取り組みにご参加いただける方は、お名前、ご連絡先(アドレス)、ご住所を記入の上、以下までご連絡をお願いします。


連絡先:Email: ueno_masami_1108*yahoo.co.jp(上野正美)
          noam*m6.dion.ne.jp       (柳原敏夫) 
                       (*を@に置き換えて下さい)
なお、この呼びかけには以下の方が賛同し、条例制定の取り組みへの参加を表明しています。



  安藤雅樹(弁護士 「まつもと子ども留学基金」監事)    
岩間綾子(「とちの実保養応援団」代表)    

大槻とも恵(社会学博士・カナダ・モントリオール市在住) 
小笠原学(支援交流『虹っ子』)
岡田俊子(脱被ばく実現ネット)       
チョ・ジウン(韓国ソウル市出身・デューク大学留学生)  
馬場利子(静岡放射能汚染測定室)              
三ッ橋トキ子(放射能汚染から子どもたちを守る会)     柳原敏夫(ふくしま集団疎開裁判・元弁護団長)